こんにちは。伊藤です。
最近と言うか、以前からセローのハンドルがカクカクするようになったので、今回はステムベアリングを交換しました。
ここを触るのは初めてだったのですが、今までやった作業で1番大変でした…。まじで…。
とりあえず、今回用意した物を色々ご紹介。ステムベアリング(93332-00079)→¥3245×2
上下に必要で、どちらも同じ物です。ベアリングとレースがセットになってます。
スペシャルワッシャー(3YF-23418-00)→¥550
爪のあるロックワッシャーです。不要でした。
ワッシャープレート(90202-26142)→¥132
再利用もできますが、ゴム部品なので一応用意したほうが良いかも。
ワッシャープレート(90201-256K5)→¥121
ちょっと大きめのワッシャー。不要でした。
続いて工具も。必要なサイズは27.19.17.12.10.8.HEX5です。スクリーン用に7も。
左上の鉤爪みたいなやつは、ステアリングステムレンチ です。トルク管理をしたいので、レンチを差し込めるやつを購入しました。
他にもトルクレンチや、見慣れない物も…。この工具達は使う時にご紹介します。
ここから作業に入りますが、その前に…。
いつもは極力分かりやすいように記事を書いていますが、「ステムベアリングを自分で交換してみよう!」と言う方々はメンテナンス初心者では無いと思うので、フォークを抜くのと同じ作業は割愛します。
フロント周りをごそっと取り外す必要があるので、先にケーブル類の取り回しの写真を撮っておきます。保険みたいなものです。
まず最初に、ステアリングナットを緩めます。27mmと言うサイズに見合った固さで締まっています。緩められるか不安でしたが、400mmのスピンナーハンドルなら余裕でした。
緩んだらハンドルを戻しておきます。
ジャッキアップして色々外しました。ここまではフォークオイル交換と同じなので、ここからが本番です。
ADVスクリーンを取り外し、ライトカウルのボルトも外します。この時にヘッドライトのカプラーも取り外しておきます。
メーターとスタックバーを共締めしているボルトを外します。キーシリンダーの左上と、ケーブルに隠れているやつです。
メーターとスタックバーが前に倒せるようになります。スタックバーの下側は2箇所差し込まれているだけなので、持ち上げて外します。
これでフロント周りが外れ、ケーブルだけ繋がった状態になります。緩めておいたステムナットを取り外しますが、ハンドルは外さずそのままです。
後はハンドルごとトップブリッジを取り外します。
この時にケーブルの取り回しが変わると後で面倒なので、なるべく綺麗に塊のまま取り外します。ハンドルを外さないのもそのためです。そのままではケーブルが突っ張るうえに作業の妨げになるので、適当に吊っておきます。自分は小さめのハンガーラックを使いました。
ようやくステアリングステムナットとご対面です。うーん汚い…。
上に被せてあるロックワッシャーを外します。
ステムレンチを使って上側のナットを外します。ここは指定トルクが無いぐらい緩く締まっているので、手で回せちゃうかも知れません。
それとナットには表裏があるので注意です!下のナットとの間にラバーワッシャーが入っています。
このナットを外すとアンダーステムが落ちるので、支えながら外します。
外れました。ここまで1時間ぐらいです。
外した物を並べておきます。(左)上からロックワッシャー、リングナット、ラバーワッシャー、リングナット、カバー、ワッシャー…そしてベアリングと続きます。
上のベアリングとレースの状態。グリスが残っている部分もありますが、すっごい汚いです。
下のベアリングとレースです。同じくグリスはあるものの、打痕がくっきりあります…。そりゃハンドルの動きも悪くなりますね。錆っぽく見えるのはグリスの残りでした。
まずは下のレースから外していきます。
中で引っ掛けるような工具もありますが、セローの場合は上から良い感じの棒とハンマーを使って打ち抜きます。うるさいので時間帯に注意!さっきと同じ写真ですが、左右にある窪みに棒を引っ掛けて叩きます。左右バランスよく叩きます。
ここまで順調にいっていたのですが、このレースを外すのに悪戦苦闘…。
窪みがあると言ってもレースが出ているのは1mm程度で、おまけにテーパー状になった奥側にあるので、とにかく棒が掛かりません。
これなら外せるだろうと思って用意した棒も上手く掛からず、小屋の中を探したりホームセンターに行ったりと、とにかく大変でした。最終的に何かのシャフト(長さ300mm直径12mmぐらい)で外せましたが、打っていると角が丸くなり掛からなくなるので、少しずつ修正しながらの作業となりました。
叩いてるうちに叩ける範囲が広がってくるので、少しでも掛かるながらガンガン叩いた方が良さそうです。
試した棒の一部も載せておきます。1番上から、今回使えた良い感じのシャフト。
曲がりシノ付きのレンチ→角度は良かったが座りが悪く掛からず。
長い全ねじボルト→ネジ山が掛かってしまい力が伝わらず。
貫通ドライバー→全く掛からず。
丸型ロープ止め→全く掛からず。
次に上のレースを外します。やり方は全く同じです。下から上に叩くので姿勢的には辛いですが、下のレースが外れた分角度が付けられるので、ものの数分で撃破できました。
力加減が分かったって言うのもありますが、やはり“良い感じの棒”が用意できるかどうかが鍵ですね。
外したレースのチェック。下とか上とか書いてますが、これは逆でした…。左が上です。
上のレースはうっすらベアリングの跡があるものの、指でも爪でも段付きはありませんでした。対して下のレースはボッコボコの酷い状態。段付きと言うか波打ってるような触り心地で、もっと早めの交換が必要でした。
次にアンダーステムのベアリングを外します。こちらもレース同様に叩いて外しますが、下準備をします。まずは叩きやすくするために外側のリテーナーを外し、内輪だけの状態にします。リテーナーは柔らかいので、貫通ドライバーで叩けばあっけなく外せます。
ここから写真を撮っていなかったので、再現した物を載せておきます…。熱膨張を利用して外しやすくするため、内輪をバーナーで熱します。
温めるとかじゃなくて、もう熱々になるまで熱します。
内輪とロアーブラケットの間を狙って、タガネで叩きます。
最初は隙間を作るために深い角度で叩くので、シャフトやステムに傷が付かないように注意です。
隙間を作る場合は、両刃より片刃の方が使いやすかったです。
上側の出っ張りは固くて脆いので、あまり叩かないほうが良いと思います。
外れるにつれて浅い角度で叩けるようになるので、ガンガン叩きます。
割りとあっけなく外れました。熱膨張ってすごいですね。
ようやく折り返しです。今回はまじで時間が掛かってます…。
ベアリングやレースがハマっていた部分を掃除したら、圧入…ではなく、叩き入れます。とりあえずベアリングから。
用意した物はこちら。長さ300mm直径32mmのパイプと、よくあるパイプ用のジョイントです。
ベアリングの外側を叩いては駄目なので、元々のベアリングを引っくり返してやろうと思っていたのですが、ちょうど良いサイズの物がありました。
これならベアリングの内輪だけを叩けるうえに、一緒に圧入してしまう事態も避けられそうです。
またしてもベアリングをバーナーで熱してから、叩き作業に入ります。
ゴムの部分が溶けるとまずいので程々にしましたが、やはりヒートガンの方が確実だと思いました。こんな感じでセットして、ひたすらパイプを叩きます。同じところを叩くと傾いてしまうので、満遍なく叩きます。
パイプがひしゃげるぐらいガンガン叩いて、ようやく圧入完了です。パイプの破片が出てしまうので、マスキングテープとかで保護すれば良かったです…。
次にレースを入れるのですが、収縮させるために冷凍庫で冷やしておきました。レースが入る場所にうっすらグリスを塗ってから、ゴムハンマーで優しくコンコンと叩いていきます。これも傾かないように慎重に…。
ある程度入ったら、古いレースをあてがって更に叩き入れます。
しっかり冷やしておいたおかげか、意外とすんなり入りました。
何mm入れるか測っていなかったのですが、指や目視で確認しても隙間が無かったので大丈夫でしょう。
それと、最後まで入ると音が変わると聞いていたのですが、確かに「コンコン」から「カンカン」と高くなるのが分かりました。
上のレースも同じやり方で入れました。こっちの方が浅いので軽く入りました。
今回は古いレースをあてがって叩きましたが、ベアリングレースシールドライバーを用意した方が楽だし確実だと思います。
グリスをべっちょり塗ります。今回はデイトナの万能グリスを使いました。ベアリングは回しながら隙間を埋めるように、そしてレースにもたっぷり塗ります。シャフトの部分は防錆目的でそこそこ塗ります。
写真にはありませんが、下のレースにもたっぷり塗っておきました。
ベアリングをある程度動かして馴染ませてから、上のベアリングにワッシャーとカバーを被せます。
アンダーステムを入れて、リングナットで軽く固定します。
このリングナットの締め付け具合でハンドルの重さが変わるので、しっかりトルク管理をします。写真のようにステムレンチを90度の角度でトルクレンチに取り付け、中ぐらいのトルクで締め付けます。
アンダーステムを左右に数回切ってベアリングを馴染ませてから、リングナットを完全に緩めます。
仕上げに、非常に弱いトルクで締め付けます。びっくりするぐらい緩いですが、ステムナットで保持されるので大丈夫らしいです。
新品のラバーワッシャーを入れてから、上のリングナットを入れます。
このリングナットの締め具合は特殊で、マニュアルには「手で締め付けてから最初に切り欠きが合う位置。必要なら工具を使う(要約)」と書かれていました。
と言うわけで手で締め付け。中途半端な位置になったので、少しだけステムレンチを使って切り欠きを合わせました。
この時に下のリングナットまで締めてしまわないように注意です!上下で合わせた切り欠きにロックワッシャーを入れて、ステムベアリング交換は完了です。後はひたすら組み立て…。
トップブリッジを戻して、ステムナットを仮締め。
メーター、スタックバー、ライトカウルを取り付け。スタックバーの下を差し込んでから戻しましたが、どれか1つではなく、全体を動かしながら戻すのがキモでした。
セローのフロント周りってほんと知恵の輪なんですね~。
タイヤを取り付け、久しぶりにジャッキから下ろします。
各部本締めして、ようやく作業完了。
ステムナットは110Nmで締めるのですが、よくある上限110Nmのトルクレンチだと柄が短くて締められない可能性が高いです。
うわっ、ウィンカーの取り回しを間違えていました…。
ウィンカーを分解して無理やり通しました。疲れてくるとミスっちゃいますねぇ。
気を取り直して各部チェック、エンジンを掛けて灯火類も問題無し!完成!
いや~大変でした…。お昼の2時から始めたのですが、休憩したりホムセン行ったりで結局10時過ぎになりました。
脱着は「面倒だけど簡単」な部類でしたが、とにかくレースを打ち抜くのとベアリングを打ち込むのに苦労しました。右手がクタクタです。
良い感じの棒を何本か用意しておくのと、遠慮せず叩くのがキモでした。
あとはホームセンターが開いてる時間にやるのと、できれば多少の加工ができる工具や機械を持っておくと安心です。
折角なので、外したベアリングとレースの大体の大きさを載せておきます。左上:内輪の外形(裏)
右上:内輪の外形と内径(表)
左下:レースの外形と内径(表)
右上:レースの内径(裏)
ざっくり寸法なので、ベアリングを購入してからパイプとかを見繕った方が良いです。
交換して乗ってみた感想めちゃくちゃ乗りやすくなりました。
最初はハンドリングが軽すぎて何か間違えたかと不安になりましたが、少し慣れるとグイグイ曲がります。これがセルフステアか…。
右左折やUターンなんかの細かい動きが非常にスムーズで、ワインディングを流しても今まで以上に軽快に走ります。
曲がり始めだけではなくバンク中の自由度も上がり、おまけに減速帯やちょっとしたギャップに対しての安定感も上がりました。すごいです。
街乗り、バイパス、ワインディングに舗装林道と走りましたが、変な震えや振動も無く、ちょうど良い締め付け具合にできたようで一安心です。
今までの作業で1番苦労しましたが、それに見合った効果がありました。こうなる前に早めに交換しておくべきでしたが、まぁそれはそれです…。
本当に大変なので、ステムベアリング交換の実績を解除したい人以外はお店に頼んだほうが良いです。